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  楝咲く頃と尋ねし四万十川の岸辺の木むらまさに咲きをり


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■せんだん

 「せんだん(栴檀)」は標準和名です。「おうち」は土佐の方言では なくて古語。昔、和歌などに使われていた表現(雅語)です。「おうち」は「楝」、「樗」と表記。

 かって、この木は四万十川中流域の窪川町(現四万十町)からずっと西土佐村(現四万十市)の江川崎まで四万十川沿いの街道に植えられていました。何のために植えられたのかは、旅人の休憩用(緑陰)のためとか、里程標代わりとか、諸説があります。

 その昔、四万十川沿いのせんだん並木を往来した旅人は、山脇哲臣氏が語っているとおり、「せんだん」の花の下を吹き抜ける風は、どこから吹いてきて、いずこまでゆくのか・・・、川面にこぼれた花粒はどこまで流れてゆくのか・・・、と思いながら、歩き続けたのでしょうか。

 「せんだん」は、春に紫色の花が咲くのですが、とても良い匂いがします。だから和歌にも詠われたものと思います。

 今は、切られて少なくなりましたが、学校の校庭には、せんだんの大木がよくありました。

【写真】溝渕幸三氏(四万十川のせんだん並木)

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[プロフィール]

大正14年南国市生まれ。
「海風」会員。

(今は亡き、母の短歌を、掲載していただき、ありがとうございました。母も、喜んでいることと思います。藤本さより氏/篠田福美氏の娘)

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[ひとくちメモ]

■土佐の国の「せんだん」

 土佐では、全ての道路に旅人のため、「せんだん」を植えていました。富田砕花は土佐路の印象を

  こごしかる北山越しに来し国の並木の道はせんだんの花

 と詠っています。

 小学校の校庭、街道並木に代表される土佐の国の「せんだん」。この花の風土の中で生まれ育った土佐の人々は「せんだん」に特別な愛着を懐いています。

 高知城の天守閣への登り口、板垣退助の銅像の脇に「せんだん」の大木があります。枝の広がりは、東へ15m、西へ4m、南へ9m、北へ8m、という。「せんだん」の巨木が多い土佐の国でも特に大きく、土佐の国の象徴とも言える「巨樹」です。

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[せんだん物語] 山脇哲臣氏著:「花想」より

■せんだん並木
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   もしも吾五月の風となるならばせんだんの花こぼしつつ吹く

 センダンの果てることもない並木を、どこまでも歩き続けてゆくときは、わが身の周囲は目くるめく紫の花のさく裂ばかり。

 足はいつしか宙を踏んで、花の階段を上ってゆくとき、そんな花のさく裂の中で、人の現身(うつしみ)と、その想いは、花のさく裂とともに空中に散華し、やがて消え果ててしまうものだろうか。

 それにしても、センダンの花の下を吹き抜ける風は、どこから吹いてきて、いずこまでゆくのだろう。川面にこぼれた花粒は、どこまで流れてゆくのだろう。花の色の紫に染められた人の想いの果ては、どうなるのであろう。

【写真】岡村龍昇氏

◆小谷貞広氏の「ふるさと・小学校のせんだん

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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   四万十川の沖積土らしき豊饒土の岸近くまで秋菜播かれつ

 沖積土は河水が運搬して、しだいに沈積してできた土壌で肥沃である。その川岸近くまで秋菜が播かれていてよく実っている。つやつやした秋菜の柔らかい葉ぶりが見えてくるような風景がひらける。川は遠い昔から時間をかけて豊饒な実りを、そこに住む人たちに与えてきたのであった。(大滝)

【写真】武吉孝夫氏(「四万十川秀歌百選」より)
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  浅緑・青・青藍と縞なして春の四万十川は海に出で行く


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■川の色

 四万十川の河口に生まれ育った私が、初めて見た川の色でした。水量と太陽光線と私とが、偶然出会ったのでしょう。

【水彩画】徳広淳也氏(大阪府・中村高校第一期卒業生)

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[プロフィール]
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 昭和20年生まれ。
 「個性」会員。
 スタジオ Shinco
(帽子製作と布フラワー教室)
 現住所:四万十市
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[代表歌鑑賞]    (四万十川短歌大会(第5回、第16回、第21回)より)

・中村市長賞
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・土佐くろしお鉄道賞
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・中村短歌会賞
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[自然遺産]

■四万十川の海老

  今我は異次元よりの侵入者ライト明かして海老掬いおり

 夏の夜、エビタマと懐中電灯を持って、四万十川に海老を捕りに行くのです。水の中に、ライトを明かすと海老の眼が光っている。海老の後ろに、そっとエビタメを入れて、素早く掬うのです。ご存じですか。逃げる時に、海老は後退することを。(岡添)

◆四万十川の海老の【四万十川百人一首

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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  コロニーは目の前の山か四万十川野鳥公園に二百余のサギ

 野鳥公園は中村(四万十)市八束にある。鷺の安住の営巣地は目の前の山なのだろう。二百羽余りもの大群が集まってきているから。5月から6月にかけて繁殖期を迎える壮観な眺めである。一口に鷺といっても白鷺・五位鷺などと種類も多いのであろう。小動物に対する作者の眼が優しい。(大滝) 

【写真】武吉孝夫氏(「四万十川秀歌百選」より)
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  四万十川の源流といふ滝に来て岩ほとばしる水に会ひたり


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■故郷というものは良いもの・・・

 先日は、早速、小谷様の歌集をお送り頂き有難うございました。自然体での小谷様のおうたは、どれもすばらしいと思います。ゆっくりと読まさせて頂きます。

 あなた様と同郷(田野町)の出身とは、何かのご縁があったのか、びっくりしています。しかも、私の弟の嫁の実家が、八幡様をはさんで、お隣さんとは、さらにびっくり。

 私は、大正11年生まれですから、あなた様のお父様や、お母様と同年代ではないでしょうか?現在は高知市に住まいしていますが、父母のお参りに、実家にもときどき帰ります。古い家はこわして、新しくなっていますが、みかん畑などは、そのままで、やはり故郷というものは、どこにいてもよいものです。

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]

大正11年7月17日
安芸郡田野町生まれ。
平成11年7月17日(77歳)
「アララギ」を経て
「氷原」「海風」会員。
歌集に「樗の花」

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[歌集・樗の花]
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■ふるさとは田野町

 土佐鶴の酒香る安田町の国道の橋を渡れば木の香せり田野町

 故郷の岡のなだりに佇ち見れば屋根より高く光る海原

 文旦と八朔積み込み戻りくる車にみかんの香りは満ちて

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 徳弘久氏の故郷は田野町。「故郷の岡」というのは、大野の丘陵(大野台地)のことです。そこには、四万十川へ単身赴任していた山藤花氏の農園があり、文旦と八朔を軽四トラックに積み込みんで、大野の岡を行き来しています。

【水彩画】村上清氏(大野より羽根岬を望む)

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[代表歌鑑賞]     歌集「樗の花」より

  群がりて樗の花の咲く一樹むらさき濃きが空に揺れつつ

 木材の町、田野町で育ちましたが、高知市で暮らし始めて50年余りも過ぎました。樗の花は大好きです。四万十川の樗を詠んだ中村の篠田福美様は懐かしい人です。(徳弘)

◆篠田福美氏の【四万十川百人一首

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]

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  中村の女はやさしと四万十の鉄橋塗装に夫は通ひき

 赤鉄橋の塗装のために通ってゆく夫。「中村の女はやさしい」と憎まれ口をたたいているのに、それを笑って送り出す妻。二人の間には無言の信頼の絆がしっかりと結ばれているゆえのユーモアになっている。塗装が仕上れば、また観光の目玉になる。(大滝)

【水彩画】徳広淳也氏(大阪府・中村高校第一期卒業生)
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  青のりを採る人舟にいそしめる四万十川の空は冬晴れ


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■歌評(佐佐木幸綱氏)

 四万十川に見る冬の風物詩である。キーンと澄んだ空気、鮮明な影を水面に映す遠景の舟、深い静寂が明るい川の風景を包む。

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]

 昭和2年生まれ。
 本名誠夫。
 現住所:四万十市
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[代表歌鑑賞]    (四万十川短歌大会(第5回、第17回)より)

・中村ロータリークラブ賞
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・土佐黒潮鉄道賞
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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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 かって故郷の盆踊りには、その地区の戦没者の遺影飾られ供物が供えられていた。30年ぶりに故郷に帰住し、地区の盂蘭盆会(うらぼんえ)に出掛けた。

 澄み切った夜空に四万十川を股ぐように銀河が架かり、戦死した兄をはじめ地区の戦没者がそこを渡っていく幻覚を見た。

 が、台風一過の晴れ渡った川面に、もう川漁をする舟を漕ぎ出した漁師がいる。赤銅色に焼けた筋骨は老いさえも見せず。(大滝) 
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