第70首 沖ななも (埼玉県)

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  うずまくとみせてS字にくずれゆく川の流れのなかのながれは


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■川の表情

 川の流れをじっと見ていると自然に流れているところや、渦巻いているところ、逆流しているところなど、変化に富んでいます。

 細かいに流れがあって、その流れもろともに大きな流れになっているのがわかります。川の力は、一定でもなく不変でもなく単純でもない、ということに驚くばかりです。


  落下する水の力が飛び跳ねる力を与う静止の水に

 静止している水がある。なにもなければ動くことはないのです。そこへ水が落ちてくる、そのことでせっかく静かに落ち着いている水が大きく動くことになる。

 水は形がないので一見弱そうに見えますが、とんでもない。かなりの破壊力を持っているものです。何かの作用が他に与える影響といえばいいでしょうか。(沖ななも)

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]
a0050405_6234863.jpg 昭和20年 茨城県生まれ。
 本名、中村真理子。
 「個性」編集長。「詞法」発行人。
 「熾の会」代表。
 第一歌集『衣装哲学』により
 現代歌人協会賞、埼玉文芸賞受賞。
 現代歌人協会会員。
 歌集『衣装哲学』『機知の足音』
   『ふたごころ』など
 著書に『樹木巡礼』
 現在、埼玉県さいたま市在住。

小谷貞広氏の「一人百首」(沖ななも)
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【水彩画】川の表情(四万十川勝間付近)徳広淳也<大阪府>中村高校第一期卒業生

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[「樹木巡礼」より]

■木々に癒される心

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 木は動かない。芽生えたところで一生を過ごす。不自由だろうと思う。殺されそうになっても、逃げることができない。くやしいだろうと思う。

  さいかちの流れへ傾ぐ古幹の上へ向く枝下へむかう枝

 川へ傾いて生えている「さいかち」は、あまりよい環境に生きているとはいえない。上へ向かう枝はまだいいとして、下へ向かって伸びる枝は幸せではないだろう。それでも、伸びられるほうへ、ひたすら伸びようとする。

 枯れかかっている木に会うことがある。あわれではあるが、毅然とした姿も見せる。生き物なのだから、いつか死ぬのはしかたがない。

 いまあることを環境のせいにしてはいないか。死に臨んで、それでも毅然としていられるか。

 木蔭で休むのはなんともいえない至福のときだが、わたしにとって、木はやさしい存在というだけではなく、厳しい存在でもある。

 わたしは、私自身を見つめるために、叱咤するために、木を見に行くのかもしれない。(沖ななも)

◆沖ななもの『樹木巡礼』
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    ・木の尊厳、人の主張

    ・鳥の世界

    ・山藤花

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[文化遺産]

■中村・天神橋アーケード街(沖ななも氏と小谷貞広氏)

 沖ななも氏は、四万十川短歌大会の選歌・講演・選評のため、四万十川を訪れています。そのとき、幡多の小京都・中村に迎い入れたのは、地元の歌人・小谷貞広氏ですが、その氏の歌に、中村・天神橋アーケード街での、沖ななも氏との行状を歌ったものがあります。
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 わが町の夜のアーケード街いっときを沖ななもと腕組て歩きぬ

【写真】中村ライオンズ認証式当日パレード(天神橋)39.5.4
              小谷貞広写真集「ゆく河の流れ」1980より

ブログ:四万十川の文化人 小谷貞広「ふるさと(天神橋アーケード街)」より

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a0050405_733149.jpg [ひとくちメモ]

■四万十川百人一首の募集について・・・、

 メールで、沖ななも氏と、次のようなやりとりをしました。

 沖ななも氏の短歌人への呼びかけで、多くの「四万十川百人一首」が集まり、感謝しています。(山藤花:編集者)

【写真】沖ななも歌集「天の穴」(短歌新聞社)

  何の木かわからなくまで枯れつくし生きすぎてしまったことの
  あんなに激しかった雨あがってしまい雲の縁のかがやきはじめ

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[メール]

■ご連絡、ありがとうございました。四万十川百首は、とってもいいことで、ご協力させていただきたいと思います。ブログになれない私には、ちょっと見難い感じがしました。人がポイントになるか、事柄がポイントになるか、ごっちゃな感じがして・・・。(沖ななも)

◆ブログは日々進化している、新しいメディアでして、今はまだ、日記風的な軽いものが多いのですが、私はこれからのマスメディア界を席捲する可能性を秘めた、ものすごいものではないかと思っています。現在、私は8つのブログを配信していますが、いずれもブログとしての可能性を先取り、試行するような思いでしています。ブログでの「四万十川百人一首」の企画も、その一環です。(山藤花)

■大滝先生の『四万十川秀歌百選』と、どう違うのですか?そこに掲載されているのを全部ブログ仕立てにすれば、いいのではないですか。(沖ななも)

◆『四万十川秀歌百選』は、大滝先生の名著であり、私の企画した「四万十川百人一首」とは、比ぶべきものではありません。私は四万十川の自然と文化を語るとき、人との繋がりがあってこその四万十川と考えています。その四万十川とのつながりを短歌という形で100人の方に語ってもらおう、というのが「四万十川百人一首」という企画です。

 故に、短歌として秀作である必要は無いし、短歌として形が整っていれば、初めて作ったような、たどたどしい作品でも結構です。心から四万十川を語っていただければ、それはそれで素晴らしい「四万十川の一首」と考えています。(山藤花)

■オリジナルにしたいなら、『四万十川秀歌百選』に載っているのは、ブログには載せないということになるのではないですか?(沖ななも)

◆応募いただいた作品が、大滝先生によって、『四万十川秀歌百選』に選ばれた短歌である場合は、その旨、ご紹介させて頂いています。また、四万十市で行なわれている「四万十川短歌全国大会」への応募作品の場合も、その旨記載させて頂いています。(山藤花)

■百首集めるとなると、その一覧みたいなのが必要ではないでしょうか?単に百首集めるのか、いわゆる著名な人のを集めるのか、ですが・・・。(沖ななも)

◆100人の方に四万十川の自然と文化を語っていただくのが目的ですので、著名、無名は関係のないところですが、応募いただいた方で、著名な方(全国的に、高知県的に)については、編集の過程で、極力その方と四万十川のつながりを調べて、ご本人に語っていただいた以外の四万十川とのエピソード、若しくは、その方のプロフィール・歌集などを、ご紹介させて頂いています。

 また、四万十川の短歌を残している故人の著名な方は、私で、出来る範囲で取材して、それを掲載しています。これまでのところ、土屋文明、橋田東声、北見志保子、吉井勇、山原健二郎、上林暁、大江満雄の各氏です。(山藤花)

■募集は3月まで、とありますが、これは、お仕事の一環なのですか?(沖ななも)

◆私は、県庁の職員として、「四万十川の自然と文化で地域づくり、地域おこし」の仕事(地域支援企画員)をしたことがあります。今は、その仕事から離れていますが、県職員として、その仕事の延長線上・集大成として「ブログ:四万十川通信」があり、「四万十川百人一首」の企画があります。

 3月に県庁を退職しますので、一応のけじめとして、この「四万十川百人一首」及び「ブログ:四万十川通信」を、何かと人生を楽しませてくれた四万十川への置き土産にしたいと考えています。(山藤花)

◆追伸

 今のところ「四万十川百人一首」は、94首そろい、どうにか3月末には、「四万十川百人一首」が完成できそうです!(山藤花)

四万十川通信

四万十川百人一首

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[代表歌鑑賞]        「現代短歌大事典」より

  白桃を分ち食べたる母とわれに一つの種子が残されるなり

■生の現実をありのままに・・・

 桃を食べれば必ず種子が残る。この当然もまた、沖ななも氏のテーマの一つである。

 母と娘はもともと一体感の強いものだが、それでも必ずいつかは別れなければならない。また、その前には当然、母も子も老いてゆく。同集中に「すでにともまたもはやとも言う母のまだの部分が意外に長い」という一首もあり、生の現実をありのままに見尽くしていこうという意志が表現の核に置かれている。(久々湊)

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]

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 中村市の赤鉄橋の上から、身を乗りだすようにして川瀬を眺める。目眩む程の水勢の中にこきざみに揺れ動く橋の影が映っている。単なる写生というより、その映像感覚を再構成しようとする思索やイメージが働く。一種の瞬間的映像再現描写法だ。<落下する水の力が飛び跳ねる力を与う静止のみずに><うずまくとみせてS字にくずれゆく川の流れのなかのながれは>などという同時作をみても、そのことがわかる。一つの個性表現である。(大滝)
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