第66首 大江満雄 (宿毛市)

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  おもふほどおもふほどにふるさとの雨の降る日は美(かな)し


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■清流四万十川

「ふるさと」とは、なにをいうものであろう。

 私は、宿毛で生まれたが、中村と宿毛を双面神的にたとえて「右の頬は宿毛で、左の頬は中村なのですよ」と言ったことがある。

 そういえば、足摺岬は鼻で、頭部は宿毛の城山であり、金比羅山であったり、中村の東山であったり、だんだん大きくなり、四国山脈ということになる。

 故郷を離れて長く東京でくらしていると、高知県全体を「ふるさと土佐」といったり、四国全体を「ふるさと」といったりする。

 宿毛の街と片島の大島、大月町の泊浦と中村の街は、家族と住んだ思い出の地だからみんな懐かしいが、とくに「四万十川」と「咸陽島」に“ふるさと感”を抱きつづけてきた。(大江満雄)

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[プロフィール]
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 明治39年7月高知県宿毛生まれ。

 小学校を卒業後、独学で通し、大正9年の大水害により上京、東京市立労働学院などの夜学で学んだ。

 ホイットマンなどの詩を愛読して詩作をはじめ、キリスト教精神のよる思想的抒情詩を書き、ユネスコ運動にも参加してハンセン病患者や人類との共生感に生き、詩作を通して人間愛の哲学を唱えた。

 代表作に「日本海流」「海峡」「血の花が開くとき」などがある。

■文学碑(四万十川河畔)
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   おもふほど おもふほどに
   ふるさとは雨と嵐
   山峡の水もくるふて流れあふれる
   豪雨の日。
   天のはげしきを
   おもふほど おもふほどに
   ふるさとの雨の降る日は美(かな)し。
   四万十川の水にごる日はかなし。

       四万十川詩集『日本海流』より

【写真】大江満雄文学碑(撮影:西内燦夫氏/四万十川新聞)

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[自然・文化遺産]

■四万十川

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 もやの四万十川!
 若葉のころの四万十川!
 おち鮎のころの四万十川!

 四万十川は四季ともに美しい川だ。が、私にとって四万十川は、たんなる自然ではない。少年の日、私はこの川に励まされた。この川は最良の友であり、教師なのだ。ずうっと、そうだった。この川は「思い」をせかせる川だ。

 渡し舟が転覆して女学生一団が溺死したとき、早く橋がかかるといいがと思った。(この事件は中村市の隣の大方町出身の上林暁の小説に出る。私もその事を思い、いろいろ思い、「四万十川」という詩を書いた。)

 四万十川は、たずねるたびに、「せかえる」だけでなく、歴史を書き変えよう、創り変えようとした人びとに寄せる「思い」を新たにしてくれる。

【写真】文学碑建立の発起人のおひとり、さわだ屋のご主人(沢田勝行氏)にあてた大江満雄氏の礼状。(宿毛、中村が両ほほのようなふるさと、と記している。)
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