第54首 山田紅衣 (愛媛県)

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  四万十の軽(かろ)き石ころと流木を盆におくなり君と見し川


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■四万十川の今昔の景を打つ

 何故か石には、その土地の蒼天・森の黒露・花野の風、そして一会の声が掌にひびく気がする。

 訪れた四万十川には、丸石の中に15cm程の竜頭の如きL字型流木が打ち上げられていた。それは化石のような耳と背梁を付け、まるで古代四国の黄泉(よみ)からの使徒そのものだった。

 細川流盆石景桂盆に白川砂を敷き、丸石と流木を配して四万十川の今昔の景を打つ。

 夫との数少ない憶い出の濃い6月の川であった。

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]

e0190619_2395411.jpg大正15年生まれ。本名、山田良子。
歌誌潮音・日本エッセイストクラブ同人。
潮音新人賞・にぎたづ賞受賞。
歌集『西行覚書』『赫具耶』合同誌『ありあ』。
愛媛県松山市在住。

『この度は、四万十川百人一首にお誘い下さいまして、有難う存じます。私も中村の四万十川短歌大会には二度参上いたし、日本で最古の源流のおもかげを持つ四万十川に魅せられている一人です。

 また、小谷貞広様には、初回に歌集「青き流れ」続いて、「蜩亭」を賜り、さらに、私の同人誌「ありあ」に参加いただきました。(山田)』
【写真】山田紅衣氏(「HP秋山兄弟生誕地」より)

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]

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  口重き漁夫のあやつる四万十の川船の底ゆ夏の音する

 話しかけるでもなく、口を閉ざしたままの寡黙な漁師のあやつる川船。反対にその船底からは突き上げるような四万十川の夏の音がしきりに響いてくる。季節は川底の音を生き生きと躍動感として伝えているのだ。(大滝)

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[自然遺産]

■夏の音

 源流の一滴一滴は、原生林の根を洗い、岩や苔に添いアユ、ウナギ、ゴリ、ナマズ、エビ、アオサを育む四万十川となる。川魚漁の遠景、近景は、この川のゆるぎのない四季であり、豪放な風物詩として懐かしい。

 口を閉ざしたままの寡黙な漁師のあやつる川船。船板を突き上げ舳先を洗う「夏の音」を聞く。それはアイヌ語の「シ・マムト」!、キリシタン大名の「一条さん」!へとさかのぼる。

 そう、緑衣に衣更えしたばかりの青年期の四万十川の躍動感そのものだった。
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