第51首 高瀬一誌 (東京都)

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  動きはじめた四万十川には閻魔蟋蟀の首がよく似合いたり


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■お便り拝見いたしました。

 高瀬一誌の家内でございます。

 四万十川の短歌をとのお申し越しでございますが、実は、高瀬は2001年5月に死去いたしました。ただいま、全歌集発行のための準備中でございますが、その校正刷りの中から一首四万十川の歌を発見いたしましたので、ご連絡申し上げます。

 素晴らしい大河のそばにお住まいの環境を、とても羨ましく存じます。

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[プロフィール]

e0190619_86507.jpg昭和4年 東京生まれ。
「短歌人」編集委員。現代歌人協会会員理事。
東京経済大学卒。父は文部大臣・郵政大臣などを歴任した高瀬荘太郎。妻は歌人の三井ゆき。中外製薬に勤務し、CMなどの制作に携わっていた。
四万十川短歌大会選者。
平成13年 ご逝去。

◆歌集
『喝采』(1982・短歌新聞社)
『レセプション』(1989・短歌新聞社)
『スミレ幼稚園』(1996・短歌新聞社)
遺歌集『火ダルマ』(2002・砂子屋書房)
『高瀬一誌全歌集』(2005・短歌人会)

 作風は、誰にも真似のできないオフ・ビートなリズム感であろう。定型からは明かにはずれているのだが、自由律とはまた異なる。

 「よく手をつかう天気予報の男から雪が降り始めたり」に代表されるように、おおむね字数は31文字に足りないのだが、読者には確かに短歌を読んでいるという実感を抱かせる。

 従来の短歌のリズムを微妙にはずしながらも、身体感覚としての韻律に訴えかけてくる独特のビートというべきである。(現代短歌大事典)
【写真】高瀬一誌氏色紙(うた一首と書けば首の字たちまち入る楽しいではないか)

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[代表歌鑑賞]        「現代短歌大事典」より

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  眼をつむればまっくらやみが来るそんなことにも気づかざりけり

■日常の空白感

 内容自体は重い。しかし、独特の高瀬節ともいえる文体が、言葉に浮力をつけて、読者に負担を感じさせない。

 「まっくらやみ」という平仮名表記と「気づかざりけり」という文語体との落差も作者の仕掛けである。現代の日常の空白感を魅力的に表現している。

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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                (歌集『火ダルマ』収載1997年作)

 夜が明けて、また一日の活気をとり戻して動き始めた四万十川には、閻魔蟋蟀の首がよく似合うことだ。この種はコオロギの仲間の中では、最も大型で頭が大きく閻魔大王の冠に似ていることからの命名。前足が油のような光沢のある暗褐色を呈しているため油蟋蟀とも呼ぶ。コロコロコロコロコロリーンと声高に鳴く。四万十川は魚ばかりじゃないよ、俺様の存在を忘れて貰っては困るとでも言いたげな諧謔歌である。(大滝)
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