第32首 石黒清介 (東京都)

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   逆光にてりいでにつつ川二つ合流せんとしてひしめきあへり


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■中村市歌会にて

 この歌は、昭和59年12月1日、中村市歌会に出席した折、市川敦子氏らのもてなしを受けた折の作品です。ほかに、四万十川の歌二首を、お送りします。(石黒)

 四万十川を落ち来し鮎は潮けむる海にただちにくぐり入らむか
 潮けむりたててよせゐる渚辺に鵜二羽ゐてみゆるさみしさ

【水彩画】徳広淳也氏(大阪府・中村高校第一期卒業生)

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[プロフィール]

 大正5年 新潟県三条市生まれ。
 昭和3年作歌を開始。
 昭和18年応召、中国・当時の仏領印度支那に転戦。
 昭和21年に帰還して「にひわら」を発行。
 昭和28年短歌新聞を創刊。短歌新聞社社長。
 翌年に超結社研究集団・十月会を創設。
 昭和52年総合誌「短歌現代」を創刊。
 現代歌人協会会員。
 歌集『樹根』『人間の小屋以前』『古志』『夜雪』など23冊
 現在、東京都国分寺在住。本名、清作。

 作風は、一貫して写生を基礎にした生活現実を正確に精緻に写し取り、平明な表現を心がけているところが特色。(「現代短歌大事典」より)

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[代表歌鑑賞]      (「現代短歌大事典」より)

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  雪の上に雪の降りつむしづかなる音を聞きをり眼つむりて

 雪の上になお降りつむ雪の音は、雪国の厳しさを体験している人でなければわからない静かな寂しい音だ。それを目をつぶって聞いている。(大滝貞一)

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[ひとくちメモ]

■短歌新聞

e0190619_19444357.jpg 石黒清介氏により、昭和28年11月に創刊された月刊短歌情報紙。歌壇の公平な情報を提供しようと全国に情報ネットワークを整備し、不偏不党を掲げた。創刊時より各種イベントも企画し、色紙短冊展、朗詠会など東京・大阪での「歌人のつどい」を積極的におこなう一方、現代歌人叢書、現代女流短歌全集、などを刊行している。

 また、創刊500号を記念し、『写真でみる昭和短史』(95.9)の貴重資料も刊行。

 最近は、ニュース性のある写真を多用し、活字も大きくするなど、親しまれる紙面作りに力を尽くしている。(大滝貞一・「現代短歌大事典」より)

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[自然遺産]

■落ち鮎

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 四万十川を落ち来し鮎は潮けむる海にただちにくぐり入らむか

 短歌新聞社の社長、石黒清介氏は、昭和59年12月1日、中村市(現四万十市)で行なわれた短歌大会の講師として四万十川を訪れています。講演の演題は『歌壇について』。

 中村市から足摺岬、下田の河口、田ノ浦海岸、入野松原・・・を探勝、そのとき四万十川を歌枕に、滞在吟20首を詠まれました。

 この「落ち鮎」の歌は、四万十川連作の一首。一年魚の鮎の生態を捉えた歌で、生命のはかなさ、自然への回帰のさまを述べていますが、生命に対する石黒氏の思い入れの深さも汲みとれます。第11歌集『雪後』に収められています。(市川敦子・「土佐歌散歩」より)

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]

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 今ここから見える四万十川は、逆光に照りだされてゆるやかに光を帯びて流れている。河口近くの四万十川と後川の合流点を詠んだもので、、水勢がひしめき噛み合っている態を平明な写生に詠いおさめている。
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