第23首 小橋延夫 (高知市)

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     四万十川の激しき流れ踏ん張りて鰻筒つける蛍火の夜


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■コロバシ(鰻筒)

 平成元年から平成11年の10年間、中村市(現四万十市)の幡多信用金庫に勤務した私は職場の同僚N氏の家に毎年招待されるのが、こよなく楽しみであった。

 夕方になると彼の持舟で四万十川に鰻筒(幡多ではコロバシと言う)の仕掛けにゆく。舟から川におりると激しい流れに足をすくわれて、ひっくり返ることも再三で河原にあがる頃はズブ濡れである。

 河原で涼風に吹かれながら乱舞する蛍に話がはずむ。長らく東京に住んでいたN夫人が「東京の暮らしに戻る気はしません」と力をこめて言われる。その夜は囲炉裏を囲んでN氏の心尽くしの鮎・鰻・川海老料理に時の経つのを忘れるのである。

 翌朝は暗い内から昨日つけた鰻筒を揚げに行くが、ずっしりと筒の重さを感じるときの「ときめき」は少年の頃と少しも変わりがない。

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]
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a0050405_6202685.jpg大正15年 大方町生まれ。
海軍兵学校卒業。
四国銀行常務
幡多信用金庫理事長
「雲珠」同人
歌集「一本道」

 毎年、四万十市で開催されている「四万十川短歌大会」の発足にあたっては、地元の歌人小谷貞広氏とともに尽力、その発展の礎を築きました。
【写真】小橋延夫歌碑・四万十市下田

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[歌集]

■小橋延夫歌集「一本道」

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       知らず知らず 歩いてきた 細く長い この道
       振り返れば 遥か遠く 故郷(ふるさと)が見える
       でこぼこ道や 曲がりくねった道
       地図さえない それもまた人生 (川の流れのように

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[ひとくちメモ]

■四万十川短歌大会

 「四万十川短歌大会」の創設は、平成4年11月。小橋氏が幡多信用金庫理事長として中村に居寓していた時のことですが、現在も同信用金庫は主催者として世話役を続けています。

 今では、毎年、海外からも含めて全国から500首余りの応募があるように、全国的、国際的にも注目を集める、大きな短歌大会になっています。これも、四万十川が「世界自然・文化遺産」として候補にあげられるように、日本最後の清流として「意義のある、また魅力のある川」、ということの証といえます。

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 さらに、その後、四万十川大会は、俳句、川柳を加え、「四万十川の文化」を日本中に、いや世界に向けて発信する大会へと発展しています。この一連の大会は、美しい自然と歴史・文化を誇る四万十市が主催する「文化祭行事」にもなっています。

 平成17年11月19日に行なわれた、第14回四万十川短歌全国大会の四万十市長賞は小橋延夫氏の作品が受賞しました。

【写真】四万十市長賞受賞作

◆四万十川の青い流れがいつまでも・・・

a0050405_6371561.jpg 晩秋の候、第14回四万十川短歌全国大会が盛大に開催されますことを心よりお喜び申し上げます。

 当市は、今年(平成17年)4月10日に旧中村市と旧西土佐村が合併して四万十市として発足しましたが、この大会のシンボルである清流四万十川をはじめとする美しい自然や古くから栄えた歴史・文化を活かし、いきいきとした生活ができるまちづくりを目差しています。

 今大会は、昨年より70首余りも多い561首のご投稿があり、嬉しく思います。

 先人の方々が四万十川の美しい情景を歌に詠まれたように、四万十川の青い流れがいつまでも後世に語り継がれていき、今後も益々、この大会が発展されますことを願っています。四万十市長 澤田五十六(平成17年11月19日、四万十川短歌全国大会での祝辞)

四万十川短歌俳句川柳大会(幡多信用金庫)

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[文化遺産]

■漁り火
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     千里かけて四万十河口に戻りたる白子鰻を漁り火が待つ

◆四万十川の美しい夜景

『毎週の金曜日の業務終了後に、幡多信用金庫を出て高知の自宅へ帰るのが習いであったが、田ノ浦や上川口などの海岸線に出ると、四万十川河口あたりの夕闇のなかに漁り火が群がり、一幅の絵になっているのが目に入る。

 一攫千金を夢見て、白いダイヤとも呼ばれる鰻の稚魚を捕るために、漁り火に目を痛めながら夜通し頑張る人々のこと。

 そして遥か太平洋の彼方から生まれ故郷の四万十川に戻ってきたしらす鰻を待つ残酷な運命のこと。

 そうした複雑な思いに沈みながら、車窓から四万十川の美しい夜景を眺めるのであった。(小橋)』

【写真】岡村龍昇氏

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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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 四万十川を吹き渡る風音が一晩中唸っていた、それもいつしか止んで、朝戸を繰れば、いくひらかの風花が舞っていた。美しい季節感覚の描写である。雄大な河川を吹く風と微小な風花の対比もいい。(大滝)

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[代表歌鑑賞]    (四万十川短歌大会(第17回、20回)より)

・四万十ロータリークラブ賞
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・土佐くろしお鉄道賞
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