第13首 多田美津子 (東京都)

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    音もなく流るる川面暮れなづみなべてを容るる色やはらかし


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■四万十川の春・夏・秋・冬・・・

 夫が、土佐清水市益野(ましの)にある教会の教会長として、平成元年から15年まで、単身赴任いたしまして、私も、その関係で13年間余り、月々教会の月次祭を中心に、約一週間の予定で、東京から通いつづけました。

 従って、中村駅からバスで四万十川を渡り、あの堤防ぞいの道を、毎回通りました。その往還に生まれた歌です。

 四万十川の春・夏・秋・冬・・・、晴れた日、曇った日の四万十川、また日暮れの川、早朝の川、そして、沈下橋も沢山見たり渡ったり。

 旅は大変でしたが、これまで見知らぬ川にあい、海にあい、人の情にあい、人生の終わりの頃になって、いい思い出を沢山つくることができました。

 その旅に生まれた、四万十川に関わる歌を、第2歌集「見残し岬」より抄出いたしました。

【写真】岡村龍昇氏

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[プロフィール]

 ・大正14年生まれ。主婦。
 ・氷原短歌会同人、日本歌人クラブ会員
 ・歌集『靄ながるる』『見残し岬』

 『生まれは、香川県の金毘羅さんのお山の裏側の山村です。平成の町村大合併により、市と称されておりますが、まだ昔の面影と大して変わらぬ故郷の村を訪れると、ほっと致します。

 それにもまして、美しい自然のままの四万十川。カワウソの見られぬのは残念ですが、何時までも、この山河が残ってほしいと念じております。

 この一首のご縁により、ご当地の歌人、小谷貞広氏を知り、一度お目にかかったことがあり、氏の歌集「蜩亭」をいただいております。「学童の渡し」の歌碑にも会うことが出来ました。

 元気なうちに今一度、四万十河畔に立ちたいと思っております。

 四万十川百人一首をインターネットに掲載するとのこと、ご苦労が多いことと存じます。歳を重ねて、何のお役にもたてませんが、遠くより心で応援させていただきます。

 インターネットの「四万十川百人一首」、子供が帰省の折に家のパソコンで拝見しようと、楽しみにしております。(多田)』

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[歌集]

■多田美津子歌集「見残し岬」
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 人間至る処青山あり、とか。

 鉄道も届かぬ過疎地、高知県土佐清水市益野の里ですが、人情厚く、自然が色濃く残っており、特に四季を通して海の景観、夜空の月、満天の星と目をみはるものばかりでございます。

 この益野に年を重ね、回を重ねて、月々、東京から益野への往還の一人旅を続けていますうちに、自然に生まれた歌を拾い集め、この集を編みました。土佐中村の四万十川では、たくさんの歌を作りました。(10.9.30)

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【写真】川霧たつ四万十川・六月早朝(歌集「見残し岬」より)

  四万十川(しまんと)の土手の茅花に光る風遊ぶ幼の髪吹き分くる
  深々とよどむ碧水底見えず獺出さうな沈下橋渡る
  雨けぶる初冬の川面の細小舟動くともなし一つ影置き
  夫の守る益野の教会まだ遠し四万十川暮れて灯の滲み初む
  往還に清流渡るわが旅の終りを知るや州の孤つ鷺
  川えびの紅浮かぶ「ごりうどん」啜りつつ眺む四万十川の雨
  刑死せし本名「幸徳伝次郎」故郷に眠りをり親族と共に
  歳月に忘れ去らるる一つ事件鎮めて四万十川ゆたけく流る
  大逆罪ありし昔の世のあはれ知るや知らずや翔ぶ鳶の群

             (歌集「見残し岬」より)

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   足摺岬

【水彩画】徳広淳也氏(中村高校第一期卒業生)

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[ひとくちメモ]

■四万十川短歌大会(第4回)

 中村市長賞
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[四万十川秀歌百選/大滝貞一]
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 昨夜来の雨が止んだ今朝の四万十川。川全体が靄に包まれている中、薄墨を一刷毛はいたように中州が朧にかすんで見える。下流遊覧船発着所近くでの日本画のような把握。(大滝)
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