第2首 小谷貞広 (四万十市)
霧深し児らの姿をたしかめて朝の渡しのともづなを解く
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■学童の渡し
中村の町から上流10キロ程の久保川の部落7名ほどが、対岸の勝間小学校に、四万十川を渡って通う、所謂「学童の渡し」の様子をうたったものです。
併し、学童も次第に少なくなり、小学校も休校になり、渡し舟も廃止となりました。
【写真】岡村龍昇氏
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平成9年「歌会始」の入選歌。このときのお題は「姿」で、四万十川対岸の中村市勝間小学校に通う、学童を乗せる渡し舟を詠んだもの。高知県からの「歌会始」入選は、42年ぶり、2人目。
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[プロフィール]
大正7年9月15日
高知県佐川町生まれ。
高知師範学校専攻科を卒業後、教職の道へ。四万十川流域の山村の小学校で教鞭をとる。
その後、中村市で料亭、レストランを経営する実業家に転進。(有)レストランおだに会長(厚生大臣賞、歌会始入選)
◆蜩亭に住まいして・・・
現役引退後は、四万十市安並の蜩亭で、かみさんと二人で悠悠自適の生活。歌会始めへの投稿は毎年欠かさず、また、3年毎の誕生日には歌集を出版している。
第6歌集(小谷貞広・一人百首)の発行は平成18年9月15日の予定であったが、刊行されず、確保していた岡村龍昇氏の百枚の写真は「四万十川百人一首」に置き換わった。
毎年、四万十市で開催されている「四万十川短歌俳句川柳大会」の発足にあたっては、幡多信用金庫の前理事長、小橋延夫氏とともに尽力、毎年世話役を続けてきた。平成20年で「四万十川短歌大会」は、17回目となる。
平成20年2月ご逝去。享年89歳。
歌集は『青き流れ』『霧の朝』『蜩亭』『藪柑子』、平成15年9月15日に第5歌集『うたかた』を出版。写真集は『ゆく河の流れ』(1980)
見せるもの何もなければ四万十の青き流れの川見てもらう
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[四万十川歌碑]
平成12年9月30日に中村市(現四万十市)川登の四万十川畔に、小谷貞広氏のご尽力により、雲珠主宰者、大滝貞一氏の四万十川歌碑が建立されました。小谷さんをはじめ、全国から28名の雲珠同人が集い、記念の除幕式が行なわれました。
この日は、大雨が降り世話役の小谷氏が色々と苦労したようですが、その時の短歌です。
ふり込むは吉の兆しといはれたり除幕の式を叩く土砂降り
みずおくにすばやくはしる魚の背を透かせて四万十は澄みわたるなり
◆四万十川歌碑の除幕式
・石川正子氏
張られたる幕は引かれて待ちゐたる師の歌碑美しく現われづる
なつかしき師の筆跡のみづみづと石に刻まれ雨はげしくて
自称せる「晴男」を返上なされませ雨に惨める碑もまたよろし
・中村あやめ氏
雨けぶる佐田の沈下橋渡り行き師の歌碑目指す川添ひの道
杉木立のしづくに濡るる師が歌碑の青石に白き文字は浮き立つ
・中村茂美氏
四万十に師の歌碑建つと友どちの乗りたる列車視界に消えつ
・有井佐代子氏
雨に濡れし碧翠石を歌友と囲み師の歌碑が放つ気を感じゐつ
四万十川讃る歌を刻みたる青石の寂びは杉木立に和す
・加納薫氏
碧石に白く浮きたつ師の歌碑の四万十川のほとりに鎮もる
◆四万十川の吟行詠
除幕式の後、2艘の屋形船に遊覧しての、雲珠同人による「四万十川の吟行詠」が行なわれ、数多くの「四万十川の秀歌」が生まれています。
・斎藤 洋子氏
赤光の川面なでゆく夕つ方四万十川は千の貌に流るる
・白石多津子氏
けふよりは満天の星もうたはむか清流のほめ歌を持ちし川なり
・中山千恵子氏
いづこより集まりたるか四万十のみづと流れは渡海浄土か
・安部巳佐子氏
沈下橋三十余あると聞きつつ一つをくぐる丸き橋桁
・飯塚智恵子氏
雨も佳し四万十川はわれらのみ花褪色のみづ舳先に分けて
・大滝貞一氏
風うけて光りおのづから銀綸子の波しぶかせる早瀬ひとところ
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[代表歌鑑賞]
釣りあげし下りの鮎が船板にはねて残りの卵をこぼす
■豊かなこころ・・・
川に棲む鮎も、漁で暮らす人々も、同じ生き物として、歌人にとっては愛すべき存在です。そして自分にとっても、さまざまなこころを写すものとして、四万十川は在ります。
四万十川を詠んだ歌には、四万十川の畔に住まいして、ひと世を生きてきた、小谷貞広氏の、豊かなこころが脈々と流れています。
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[歌碑]
桜づつみ公園(四万十市)
歌碑建てて下さるというありがたし
死んでからでは見られぬものを
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[最後のお便り](平成19年11月2日)
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わが町も黄砂にけぶる匍匐してつかみし戦のときの黄土か
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[ブログ]
<小谷貞広公式ブログ 「四万十川の文化人 小谷貞広」 >
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[こころのうた 四万十川百人一首(小谷貞広一人一首)]
四万十川短歌大会(第15回)大会賞
by wakasin100s
| 2009-08-11 02:37
| 四万十川百人一首